エッセイ

「干物のある暮らし」第1話 小さな希望

2021年9月13日

スポーツの秋。読書の秋。食欲の秋。

光陰矢の如し、気がつけば、2021年も4ヶ月を残すのみとなった。
コロナウィルスワクチン接種を終えて帰宅したが、外にも出られないので、部屋の隅に積んであった文庫小説を手に取ってみる。

パラパラと読み進めていると、ひとつの台詞に手が止まった。

「醤油だの米だのというものは、ただの商品ではなく、暮らしの保証なのだ。明日もあさってもそれを使うという、家で食事をすることができるという、穏やかな暮らしの保証。」

私はこの台詞に至極共感し、ひとり声を出してしまった。
食材はただ食べて終わりではない。たしかに生活の中に存在している。
『干物』という日本古来から受け継がれている伝統食を提供する末席の一人として、忘れてはいけないことだと身に沁みた。

日も暮れて夕食の時間。
そういえばと思い、冷凍庫から『さばの干物』を取り出して、熱々に熱した網に乗せる。
焦げ目をつけながら、ジュージューと音をたて、食べ頃のタイミングを教えてくれる。
その間にご飯と味噌汁を盛り付け、醤油差しを食卓にセットする。
白いご飯と、わかめのお味噌汁と『さばの干物』。
なんの変哲もないが、日常を香りたててくれる。
「明日もダメかもしれないな」と落ち込んだ時も、どんな時だって寄り添ってくれた風景。
よろこびも挫折もある人生に、小さな希望を灯してくれるご飯の時間。

ブログの装いも新たに。

私自身、大川水産に勤めて10年以上の月日が経ちました。
日常に転がっている「おいしい喜び」を少しずつ綴っていきます。

灰干し

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